狭心症・心筋梗塞
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは、大きく分けて狭心症と心筋梗塞があります。いずれも心臓を栄養する血管(冠動脈)が動脈硬化によって狭窄あるいは閉塞することが原因です。狭心症は血管が狭窄することによって、運動時に「胸が締め付けられるような痛み」を自覚し、心筋梗塞は血管が閉塞してしまい激烈な胸痛を起こします。
これらの虚血性心疾患は、近年の日本人の食生活が欧米化したり不規則な生活習慣により増加傾向であり、日本人の死因の第2位は心疾患となっております。 この狭いあるいは閉塞した血管を治療するのが私たち循環器内科の仕事です。
血管の中にカテーテルという細長い管を通し、詰まっている血管に小さな風船やステントという金網の管を留置することで広げます。 また当院では高度な心臓血管の解析が行える64列CTも導入しており、外来で安全かつ低侵襲的に虚血性心疾患の診断ができます。
狭心症・心筋梗塞について
梗塞とは、「血管が詰まり、その血管が栄養している領域の細胞が酸欠で死んでしまうこと」を指します。心臓は心筋細胞という特殊な筋肉でできていますので、心筋梗塞とは「心臓の血管の閉塞により心筋細胞が壊死する」状態を指します。ちなみに狭心症とは、心筋梗塞と同じ虚血性心疾患という分類の病気ですが、まだ心筋細胞が死んでない状態を指します。
心筋細胞は一度死ぬと再生できません。死んでしまった部分は心臓としての機能を失うため、その範囲が大きければ大きいほど心機能は落ちます。このため心筋梗塞を起こすと、階段や坂道を休み休みでないと上れない、といった心不全症状が出てしまうのです。
狭心症・心筋梗塞の症状
前から胸を締め付けられるような「前胸部絞扼感」、押さえつけられるような「前胸部圧迫感」が代表的です。他にも左肩や喉、顎、歯などが痛む場合もあります。大抵は耐え切れない激しい痛み・不快感で来院されますが、中にはわずかな胸部不快感しか自覚しない方がおられます。そのような無症候性心筋梗塞を起こす代表的な疾患は糖尿病です。糖尿病の進行した方は感覚が鈍くなるため、心筋梗塞ですら痛みを感じないこともあるのです。
狭心症・心筋梗塞の治療
心臓を栄養する血管を冠動脈といいます。心臓を出てすぐの所から右に1本、左に2本生えており、心臓を包み込むような形で心筋細胞に血液を供給しています。その血管が様々な原因で動脈硬化を起こして細くなり、あるとき突然詰まってしまうのです。その閉塞した血管を少しでも早く再疎通させ、心筋梗塞の範囲を小さくするのが、私たち循環器内科の仕事です。
「カテーテル治療」といって、メディアでよく取り上げられる治療法です。
簡単に治療を説明すると次のようになります。
- 腕や股の太い動脈からカテーテルという特殊な管を心臓まで持っていく。
- 冠動脈の入口から造影剤を流し込み血管の走行・閉塞を確認。
- 特定した閉塞血管に細いワイヤーを通過させる。
- 小さい風船で閉塞部を拡張する。
カテーテル治療だけでは再狭窄しやすいので、ステントという金属の筒を置いてくる治療が一般的です。
下肢閉塞性動脈硬化症
下肢閉塞性動脈硬化症とは
動脈硬化から足が痛くなることがあるのはご存知ですか?
糖尿病・高血圧・高脂血症といった生活習慣病は、全身の動脈硬化を促進して脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすため問題視されます。足の動脈の動脈硬化が進行して足に血液が十分流れて来ない為に、足に様々な症状が出る病気が下肢閉塞性動脈硬化症です。生活習慣病の増加および高齢化の進行により、下肢閉塞性動脈硬化症の患者数は増加傾向です。
下肢閉塞性動脈硬化症の症状
下肢閉塞性動脈硬化症は、症状によって重症度が分かれます。
- 足のしびれ・冷感
- 歩いたら足が痛くなるので休み休み歩く「間欠性跛行」
- 安静時も痛みを自覚
- 潰瘍・壊疽
足にできた口内炎のような傷が潰瘍です。血液が来ないので、栄養が足りずになかなか治りません。それどころか潰瘍がどんどん広がり、傷口から菌が侵入して全身の感染症となることもあります。こうなると非常にやっかいです。下肢切断が必要となったり、死に至ったりすることもあります。重症な下肢閉塞性動脈硬化症は大腸癌と生命予後が変わらない、とも報告されております。
下肢閉塞性動脈硬化症の治療
治療法には、非侵襲的(痛みを伴わない)なものと侵襲的(痛みを伴う)なものがあります。
非侵襲的な治療には、運動療法と薬物療法があります。これらの治療だけでも、筋肉量が増えて血流量が増えたり、毛細血管が発達したりすることで、痛みが改善する方もおられます。 侵襲的な治療には、外科的なバイパス手術と内科的なカテーテル治療とがあります。バイパス手術とは、自分の静脈や人工血管で、血流の迂回路を作ってあげる手術です。カテーテル治療とは、カテーテルという細い管を動脈に刺し入れて、狭窄・閉塞している動脈を風船やステントという金属の筒を入れて広げる治療です。
バイパス手術に比べて低侵襲で早期退院が可能なため、当院では下肢動脈に対するカテーテル治療を積極的に行っております。ただし、それぞれの治療法には一長一短があるため、患者さまの病態に合った治療法を選択する必要があります。
下肢閉塞性動脈硬化症の患者の約半数に心血管疾患が見つかったというものや、死因の50%以上が脳・心血管疾患で、正常人の倍以上の割合だった、という報告があります。だからこそ下肢閉塞性動脈硬化症が見つかった場合、他の臓器に問題がないかをチェックし、糖尿病・高血圧・高脂血症などを改善する必要があります。
不整脈
不整脈とは
不整脈とは、心臓が発する電気信号の発生や伝達に異常がおこり、本来の正しい脈のリズムが邪魔された状態を指します。
その不整脈の症状としては、違和感や今まで意識することの無かった場面で「脈」を気にするといった軽いものから、動悸や息切れなどの強いもの、場合によっては意識を失うなどの大変危険なものまであります。
不整脈治療のご案内 カテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)について
不整脈の治療において薬物治療だけでは限界があり、また根治という観点からもカテーテルアブレーションという治療方法は非常に有効な治療手段です。
カテーテルアブレーションとは、非常に柔軟な樹脂製の細い管の先端に金属の電極を取り付けた専用のカテーテルを足の付け根の血管などから心臓に持ち込み、不整脈の原因となる異常な電気回路を焼灼して二度と不整脈を起こさないようにする治療方法です。直接、原因を取り除く治療方法のため、治療が成功すれば不整脈に対する薬物治療の必要性は無くなります。
※不整脈の種類によっては内服治療の続行が必要なこともございますので、まずは、専門医に御相談ください。
一般的な手術とは異なり、カテーテル(細い管)を用いた治療法ですので、患者さまの体への負担も少なく、入院期間も比較的短く済みます。不整脈の種類によりカテーテル検査・治療の時間は異なりますが、一般的な不整脈では3時間前後で、入院期間は5日間前後です。また、治療後・退院後も当院の循環器内科外来にて定期的にフォローアップします。
なお、アブレーション治療はまれに合併症を起こす場合もあります。
当院では、循環器内科の常勤医として日本不整脈心電学会不整脈専門医である安田医師が、主にアブレーション治療を担当しております。
不整脈の治療をご希望される患者さまは一度、当院循環器内科にご相談ください。
心不全
心不全とは
心臓は、末梢の臓器が必要とする酸素量に応じて、血液を循環させるポンプの役割を担っています。心不全とは、その機能が様々な原因により破綻した病態のことです。息切れ・呼吸困難、咳、足のむくみ、体重の増加などの症状が出現します。
原因には様々なものが挙げられます。
- 心臓の栄養血管の病気(冠動脈疾患)
- 心臓の筋肉の病気(心筋症)
- 心臓の弁が原因となる病気(弁膜症)
- 不整脈、伝導障害による病気
- 肺血管の病気
大まかに分類するとこういったものが挙げられ、心不全の病態は急性心不全と慢性心不全の2つに分類されます。どのような原因から心不全が起こってきたのかを特定するのも、私たち循環器内科の仕事です。
急性心不全の治療
急性心筋梗塞、急性心筋炎、僧帽弁乳頭筋断裂などにより急激な心機能の低下により、血行動態が破綻し、突然症状が出現することを急性心不全といいます。全身状態や病状に合わせて、血管拡張薬、強心薬、利尿薬、酸素投与などを組み合わせて適宜調節しながら治療を進めていきます。場合によっては挿管して人工呼吸器を用います。原因疾患によっては、緊急カテーテル治療あるいは心臓血管外科による緊急手術が必要なこともあります。
慢性心不全の治療
慢性心不全とは、急性心不全から脱した状態です。慢性心不全では、降圧薬、心筋保護薬、利尿薬等の内服薬を続けることが大切です。また禁煙や塩分制限なども大切となってきます。原因となる疾患に対する治療も大切です。治療の継続が途絶えたり、もともとの原因となる疾患が増悪すると、徐々に血行動態が破綻し、急性心不全に準じた治療が必要となります。