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MRSA対策

医療・教育関係の方へ
2021年6月23日 更新

MRSA対策

1.分かりやすいMRSAの話

一時期、院内感染として新聞にもかなり頻繁にでていましたが、最近あまり見ないようです。 MRSAの発生に関しては感染症の治療薬である抗生物質の乱用が原因で病院内だけの問題といわれていましたが、現在では病院外の一般社会にも拡大しているようです。
当院の外来に来られて検査された方で黄色ブドウ球菌が検出された中のMRSAの比率は年々増加傾向にあり、最近では40%に達しています。これは院外でもMRSAが広がっている証拠といえます。ちなみに院内でのMRSAの比率は200床以上のある程度おおきな病院では60~70%といわれています。当院ではいろいろな努力の結果、現在は50~60%まで低下させることが出来ましたが、今後さらに減少させようと検討中です。

MRSAとは?

MRSAとはメチシリン耐性ブドウ球菌の英語名の頭文字をとってつけられたバイ菌の名前です。

メチシリンという抗生物質が効かないという意味の名前ですが、実際は現在使用されている抗生剤もごく一部を除いて効果がありません。それでこのバイ菌が感染症を起こすと治療に大変苦労するわけです。ただし、もともと黄色ブドウ球菌というバイ菌はずっと以前から人間とともに存在してきた菌で、例えば普通の健康な人の20%は鼻の中にこの菌がいます。
通常は悪さをすることはなく、ケガをした時に傷口が膿んだりした際に見つかるバイ菌です。このブドウ球菌のなかで、抗生剤に抵抗力をもったものがMRSAとよばれるわけです。
ということで、健康な人には問題ないのですが、弱った患者さまにこの菌が感染し、肺炎などの病気を起こすと治療が難しく問題となるわけです。

どういう人が注意したら良いか?

まずは病院内では体の弱った患者さまがたくさんおられますから、注意するのは当然です。 それ以外は普通の人ではまず問題ないのですが、例外として、感染症を起こしやすい1才未満の乳児、寝たり起きたりの高齢者などは用心したほうが良いと思います。

MRSAにかかったら?

先程もお話したようにこのバイ菌にかかったからもうだめということでは決してありません。
健康な人では悪さすることはほとんどありませんから。また数は少ないですが、バンコマイシンなどちゃんと治療薬もあります。要はそれ以外の体力というか体の状況がより問題なのです。
当院ではこのような考え方で感染管理委員会がMRSAの監視を続けながらよりよい対応を検討していますので、必要な際はご協力をお願いします。

2. MRSAの具体的な対策

隔離をする場合、しない場合

感染症法でMRSAは5類感染症です。数が増えすぎてきたせいか、扱い方は緩和されました。
当院でも新法の趣旨にしたがって隔離の方針を緩和しました。この法律は米国のCDC(疾病予防管理センター)の流れを受けており、感染ルート別に対策を講じるという考えになっています。

因みに、感染とは反対に清潔に保つ場合にも、CDCの勧告では部屋の前の粘着マットやガウンについては必要ない、としています。そこで2階の救命センターや手術室では段階的に廃止しています。結果は好影響でした。

手洗い

CDCでも手洗いは最重要であることが謳われており、今でもMRSAで隔離せねばならない場合でも、逆に清潔を旨としている場合でも、手をよく洗えるよう、半袖を目標としています。手洗いの重要性については、バイ菌のことがよく判っていなかった19世紀に遡ります。

ウイーン総合病院でお産の後の感染症(産褥熱のこと、MRSAではなかったが、触って移るのは同様)が続出したとき、ゼンメルワイス(Semmelweis)先生が「手を洗え」と唱え、「院内感染」の発生を減らしたことが有名です。当時は、この先生は狂人扱いされましたが、細菌学が発達した20世紀も、さらに耐性菌がはびこる21世紀も、この教訓は生き続けています。

服装

ゼンメルワイス先生も気付いていましたが、少し先立つ頃、ハーバード大学のホームズ(Holmes)先生も、血だらけの着衣の医師がお産に立ち会うと感染症になることを指摘しました。バイ菌の知識のない時代でしたが、経験から着衣は見た目にもきれいでないとならないと考えたのです。現代にも通用します。当院でも、着衣の区別をはっきりさせるため、診療場所で色分けをしています。

入院期間

国内であまり知られていないのが、入院期間とMRSAとの関係です。
なぜなら、ブドウ球菌は人の手の触れるところはどこでも居ると思わねばならないからです。 特に手術前にMRSAなどが付いたらいけないので、CDCは手術直前の入院を勧めています。 当院でも事情が許す限り、入院期間について患者さまに説明しています。

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