
今年も当院に関するいくつかの話題を申し述べます。
●病院統合
令和8年3月4日、前田晋太郎市長、下関医療センターを含む全国の57病院を統括するJCHO(地域医療推進機構)の山本修一理事長、及び当院理事長である私の3人が市庁舎で2病院の統合に関する基本的合意の締結式を行いました。私はこの病院統合をするために下関市に呼ばれましたので、11年間の望みがかなった瞬間でした。最初は4病院がひとつになれないかとの考えを持っていましたが困難なことがわかり、ひとまず3病院になり、次に2病院になるか時代の変化次第でひとつになるしかないと思うようになりました。
新型コロナウイルス感染症に振り回された4年間は完全にブランクになりましたが、基本的合意によりひとまずは肩の荷が軽くなった気がします。
新病院の施設は下関市が整備、統合にとってこれ以上ない好条件のJR幡生駅近くの市有地に移転するため、よく計画を練って設計施工者さえ決まれば建設されますので、これからの課題は職場文化が異なる両病院の職員がどう混じり合って良い組織となるかです。
皆が医学・医療に携わる良識ある職員たちですから、必ずうまくいくと思っていますし、楽しみにもしています。決して見栄を張らず無理をせず、加えて時代に即した形で下関市民のための医療をしっかりと守れる病院にしたいと思います。
●病院機能評価の更新認定
昨年8月に病院機能評価更新審査を受審しました。評価項目は医療情勢の変化に対応し見直しが行われるため、様々な点で強化されていました。中間評価でB評価となった項目については改善を行い、訪問審査に臨んだ結果、10月に受け取った審査結果はS評価が2項目、A評価が84項目、B評価が2項目でした。
S評価は秀でた取り組みをしている、A評価は適切に行われている、B評価は一部課題はあるが一定の水準に達している、C評価は一定の水準に達していないという評価で、C評価がひとつでもあれば認定が留保され、再審査をうける必要があります。
優れているとS評価を受けたのは、(1)業務の質改善への継続的な取り組みと(2)多職種協働の診療ケアの実施でした。(1)はTQM(Total Quality Management:組織全体で(Total)医療の質(Quality)を継続的に向上させていく(Management))大会、リスクマネジメント(Risk Management:医療事故の未然防止、再発防止、被害最小化を目指す安全管理体制)大会や関連の国内学会発表が「患者・家族の意見を活用し、医療サービスの質の向上に取り組んでいる」という項目で高評価を受けました。また、(2)は転倒予防班、多職種カンファレンス、HCU(救命センター)へのリハビリテーション早期介入など多数のチームが実働していることが評価されたものです。
S評価を受けるには改善に努め継続していることが必要です。職員がよく頑張って行ってきた成果です。また5年後には更新審査があり、審査に伴う負担もありますが、改善すべき点が見つかり病院にとって有益と思います。
●膨らむ赤字
令和7年度、日本全国ほぼ全ての急性期病院が赤字に転落しました。なぜ赤字なのか?大きな要因は物価の上昇です。エネルギー価格、輸送費、原材料費など、あらゆる物価の上昇が続いています。景気が低迷しているよりは、物価は少しずつ上がる方が景気が良くなると政府や経済学者は仰せです。大きく報道はされませんが、病院が使う診療材料、手術器具、薬剤なども値上がりしています。
また、政府による経済総合対策として行われている賃上げも大きな負担となっています。
確かに他の先進国に比べ日本の賃金上昇率は低いため、賃金が増えるのは大変結構なことです。しかも医療従事者は命を預かる重い責任を負う仕事のため、もっと多くても良いはずですが、この賃上げによる負担が病院に重くのしかかっています。
これまでと同じ診療業務を行うための必要な経費が収入では賄えなくなっているのに、値上げができないのです。こんな理不尽な業界は他にありません。
通常、原材料費、エネルギー価格、人件費などのコスト増加分は販売する商品やサービスの価格に転嫁されますが、医療ではそれができません。保険診療は厚生労働省が定めた診療報酬によって、医療費が決められているからです。昨年度の医療機関等における賃上げ物価上昇支援事業が施行されましたがとても補える状況ではありません。
●働き方改革
日本は世界的にも祝日の休日が多い国であることをご存じでしょうか。そのうえ、「働き方改革」による労働時間の規制強化によって制限が行われています。働き方改革は個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革とうたわれていますが、決してそうはなっていないように思います。
働き手不足などの問題が解消されないまま行われた労働時間の規制強化によって、医療業と同じく、重要なインフラを支えてきた建築業、流通業などにも様々な問題が起きているのは周知のとおりです。医療業においては次に起こりうるのは診療制限です。労働時間の規制を行うことで一律に「働けなく」して、政府はこの国をどうしようとしているのか疑問に思います。
働き方改革法の「改革」が急務だと思いますが、負担軽減も大切です。当院では、医療従事者の時間外労働短縮のために、患者さんやご家族への病状説明等の面談は、医師が必要と認めた場合を除き、診療時間内とさせていただいております。「仕事が終わってから行くので入院中の家族の病状の説明をして欲しい」や「土曜日に遠くから帰るので入院している父の容体を教えて欲しい」ではなく、診療時間内でしか行えないことにご理解とご協力をお願いいたします。
当院をはじめとする医療業界を取り巻く現状は厳しいですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


